2008年10月27日

《生きていく日々/天水圍的日與夜》

東京国際映画祭でもう1つ観ることができました。《おばさんのポストモダン生活》と同じ許鞍華(アン・ホイ)監督で、《おばさんの〜》が面白かったので、「やっぱりこれも観よう」と当日券で観にいきました。私は大好きなタイプの映画だったけど一般受けはどうかなと思っていたら、「アジアの風」部門のスペシャルメンション(グランプリの次点みたいなもの?)を受賞したそうで、やっぱりいい映画だったのね。

《おばさんの〜》は上海が舞台で北京語作品でしたが、《生きていく日々》は香港のお話で全編ばりばりの広東語です。香港郊外の団地に住む母(貴姐)と高校生の息子、一人暮らしのおばあさんのある夏から秋にかけての生活を描いたもの。「特に何も起こらない」といえばまあそうで、大事件は起こらないし、登場人物が大声で泣いたり喚いたりもしません。

でも“普通の人”である貴姐にとっては、老いた母親が何度目かの入院をしたり、親戚に不幸があってお葬式に行ったり、同じ団地に住むおばあちゃんと仲良くなったり、そしてそのおばあちゃんがちょっとワケありで一緒に住めない孫に会うのに付いていってあげたり、息子が無事に進級できたり、って結構いろいろあった夏なんですよ。少なくとも私から見れば「何もない」なんてことはない。
でもそんな毎日を淡々とつつましく暮らしていて、そして息子に「お母さんは幸せそうだ」って思われてる貴姐。ああ、いいなあ。

この息子がまた本当にいい子で、優しくて素直でしかもイケメン、だけど普通にどこにでもいそうな男の子でもある。夏休みだから家で寝てばかりいるし(どこぞの息子とおんなじだ、笑)。でもどうやらお友達はちゃんといるし、先生にも気に入られているし、成績もまあまあいいらしいってことがなんとなーく薄々わかってくる。こんないい息子がいて、何かあるとすぐに会えるところに親兄弟がいて、兄弟達はそれなりに出世して何不自由なく暮らしているみたいだし、さりげなく姉である貴姐の生活も気遣ってくれているようだし、貴姐自身も元気に働けて、イライラしたり鬱々としたりすることなく毎日飄々と生きている、らしいことがやはりなんとなーく画面から伝わってくる。少ないセリフとあとは映像だけで、貴姐の人となりまでわかってきて、波乱万丈もハラハラドキドキもないけど全然退屈しないどころかどんどん引き込まれました。そして最後にそんな貴姐がある意味ちょっと羨ましいと思いつつ、ほんわかとした気持ちになりました。
(最初の頃は息子はろくでなしなのかとか、貴姐の親類は皆お金持ちなのに貴姐母子だけが貧乏でカワイソウな境遇なのかとか、ちょっと思わせぶりな演出があります。突然貴姐がクビになるのか?息子が何か事件を起こすのか?おばあちゃんは実はとっても暗い困った人なのか?なんてあれこれ思うけど、結局は何もなかったんだよね。「なーんだ。でもよかった。」みたいな。)

母子やおばあちゃんの日々の生活が丁寧に描かれるんだけど、スーパーや市場で買い物したりするシーンは自分達と全然変わらなくて親しみも感じました(私はスーパーで卵のパックを開けて卵の大きさを見比べたりはしないけどね)。あと母と息子の会話。「ある、ある〜」と思わずニンマリしちゃいました。
これが日本の話だったら、あまりに普通すぎて面白くもないかもしれないけど、香港だからこそ「香港も日本と同じねー」とか「香港ではこうなのねー」とかっていろいろ面白かったです。これは外国の映画を観る楽しみの1つで、これがあるから私は大型娯楽大作よりはこういう「小市民の生活を淡々と描いた」地味な映画が好きなんです。
ともかく《生きていく日々/天水圍的日與夜》は私の好みにぴったりの映画でした。

《生きていく日々》@TIFF
posted by meiry at 11:54| Comment(0) | TrackBack(0) | その他映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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