2008年10月22日

《おばさんのポストモダン生活/姨媽的後現代生活》

今年の秋の映画祭については、期間中の予定がはっきりしなかったこともあり、先行予約はおろか一般発売の前売り券も買っておりません。でも、この映画は当日券が買えたので観てきました。
以前にも映画祭で上映された作品で、今年は特別再上映という形で一日のみ上映されたもの。監督は霆鋒出演の《玉観音》と同じ許鞍華(アン・ホイ)です。

今から観る人もそういないと思うのでネタバレしますが、上海で一人暮らしをしているおばさん(斯琴高娃/スーチン・ガオワー)をめぐるお話。そうです、主役は“おばさん”です。
おばさんは中国東北地方のある街で暮らしていたんだけど離婚して一人で上海で暮らすようになって10年。ケチケチ節約生活ながらも気ままに都会生活を楽しんでいたのに、周潤發(チョウ・ユンファ)演じる怪しい“おじさん”と知り合ったことがきっかけで詐欺にあい、コツコツ貯めた全財産を失ったあげく、陸橋の階段を踏み外して手と足を骨折してしまいます。お金もなく身体も動かず、仕方なく10年振りに会う娘(趙薇/ヴィッキー・チャオ)に悪態をつかれながら東北の寒い街に連れ戻されるというのが大筋。

上海でのおばさんはそれなりにオシャレもしてて、シャンとしてて、人情もあり、周潤發とちょっといい仲になるくだりでは可愛らしくもあり、見ててほんと楽しかったです。コミカルな場面も多く、場内でもクスクス笑いが何度か起こってました。(お金持ちな隣人の“水太太”はどこかで見たと思ったら、《男兒本色》のジェイシーのおばあちゃんでしたね。)

ところがいろんなことが起きて(省略するけど)、おばさんは「もう上海では暮らせない」と観念して、10年前に捨てた夫と娘の家に戻るわけです。おしゃれでインテリぶってた周潤發とは比べ物にもならない無骨で無口な夫の世話に明け暮れ、自分もすっかり白髪だらけになってしまいました(上海にいた頃はいつもキレイに染めていたのね)。
ラストシーンは寒い寒い市場。露店で夫が作った靴を売って生活しているらしく、その日も夫とおばさんは市場にやってくる。そこで店番をしながら虚ろな目をしたおばさんが饅頭(マントウ)を口に運ぶ、というところで終わるのです。

途中まですごく面白かったのに、陸橋の階段から転落したおばさんは人生からも転落しちゃって、たぶん嫌で嫌でたまらなくて飛び出してきたのであろう北の寒い街に戻って、淋しげに市場に座っている。このラストを一体、どう受け止めたらいいのか戸惑いました。おばさんや、おばさん予備軍の女性には辛い、悲しいラストでした。どうしてこんなやるせないお話を映画にしたんだろう?と理解に苦しみました。

でも、しばらく考えているうちになんだか解釈が変わってきました。おばさんは少なくとも上海にいた10年間は楽しかったはずで、離婚しないでずっと北の街で過ごすよりも絶対によかったはず。最終的に市場に座ることになったとしても、10年も気ままに楽しく暮らせたんだからおばさんには悔いはないんじゃなかろうか。上海で貯めたお金は全部なくなっちゃったけど、映画の中で周潤發やおばさんが言ってたように「この世に自分のものなどない」。何か物を残せばよいというものではないのです。

そう思っていたら暗い気持ちはなくなりました。同時に私も今でさえあまり将来を考えずに好きなことやって生きていますが、この先、どんな生活になっても悔いのないよう、何でもやりたい事やってやるぅ!と元気な気持ちになりました。うーん、どこまで楽観的?でもこの映画は「ああ、女の人生って何?」とかってため息ついて落ち込むんじゃなくて、そうやってたくましく前向きに解釈するのが吉っていう気がしました。結局、この映画、面白かったわ!
posted by meiry at 01:32| Comment(2) | TrackBack(0) | その他映画の感想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>この世に自分の物などない
ここ、ものすごく共感しました。私も常日頃そう思って生きてます。まぁ、残す人がいないというのが正解だけど。生きるのに必要なものだけ最低限買って、毎日を生きてます。私が死んだら、ニコラスブツ(大してないけど)は、迷の人に差し上げるし、棺に入れて欲しいものもないわ(笑)。
って、ここで語ってもね〜、私ったら。

この映画は観たことないけど、いつか観ようと心に決めました。
Posted by yonko at 2008年10月23日 08:28
■yonkoさん
ぜひ観て感想を聞かせて下さい。
ネットで他の人の感想も読んだけど、女の人は「ラストがあまりに救いがない」と拒否感を持つ人が多いみたい。もしくは監督が何を言いたいのかわからない、とか。
私の解釈は間違ってるのかもしれないけど、どうせ映画観るなら悪く取って落ち込むより、自分にいいように解釈して「面白かった!」と思った方がいいよね(笑)

>この世に自分の物などない
はっきりこう言ってたかどうか覚えてないけど、まあそんな内容のことを言ってました。
私もどっちかというと物欲はない方よ。
Posted by meiry at 2008年10月24日 00:47
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/108427110
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。